【メーカー研究者執筆】ねじ付きオイルシールの種類と性能

ポンプ作用の重要性

オイルシールは、オイル(油)をシール(密封)するために使用する機能部品であり、密封メカニズムはポンプ作用によってオイルが大気側へ漏れることを抑止しています。ポンプ作用を定量化した値を”ポンプ量”と呼び、基本的に「ポンプ量が多い=高い密封性能を有する」と考えるため、オイルシールのポンプ量が増加する仕様・環境・条件を構築することで漏れのリスクを軽減することができます。
ポンプ量を増加させる方法の一つとして、ねじ付きオイルシールがあります。※ポンプ量を増加させる方法の一覧については、別記事『オイルシールのポンプ量増加方法』を参照下さい。
本記事では、ねじ付きオイルシールの種類と、各ねじの性能についてメリット・デメリットを解説します。

ねじ付きオイルシールの種類

オイルシールにおけるねじの種類として以下の4つがあります。
 ① プレーンシール(ねじ無し)
 ② ヘリックスシール(一方向の等高ねじ)
 ③ パーフェクトシール(両方向の等高ねじ)
 ④ スーパーヘリックスシール(一方向の2段ねじ)

これら4種類のねじの性能に関するメリット・デメリットを以下に解説します。

① プレーンシール(ねじ無し)

プレーンシールとは、ねじが付いていないタイプを指し、リップの適正な面圧分布によって生じるポンプ作用でオイルを密封します(図1)
【メリット】
・オイルシールの仕様として回転方向の制限が無い(※正・逆方向ともに密封できる)。
【デメリット】
・以下で紹介する②~④のねじ有り仕様と比較して、ポンプ量の絶対値が小さい。
・運転中において、リップの摩耗形態の悪化などにより面圧分布に乱れが生じると、ポンプ作用が機能しなくなることで密封性能を喪失するリスクあり。

図1 ポンプ作用(適正な面圧分布時)

② ヘリックスシール(一方向の等高ねじ)

へリックスシールとは、一方向の等高ねじが付いているタイプ(図2)を指し、①のプレーンシール(ねじ無し)で解説した面圧分布によって生じるポンプ作用に加え、等高ねじによって生じるポンプ作用にてオイルを密封します。
【メリット】
・プレーンシールよりもポンプ量の絶対値が大きい。
・③のパーフェクトシール(両方向の等高ねじ)と比較してねじ本数を多く設定できるため、一方向だけで言えばパーフェクトシールよりもポンプ量の絶対値が大きい。
・運転中において、リップの摩耗形態の悪化などにより面圧分布に乱れが生じた場合であっても、ねじが機能していればポンプ作用は保持され、密封性能を維持できる。
【デメリット】
・ねじが一方向であるため、オイルシールの仕様として回転方向が一方向に制限される(※逆方向に回転すると漏れが生じる)。
・リップ摩耗(=ねじ摩耗)が進行していくと、ねじによるポンプ量は徐々に低下する(※ただし、常時プレーンシール以上のポンプ量は維持できる)。

図2 ヘリックスシール(一方向の等高ねじ)

③ パーフェクトシール(両方向の等高ねじ)

パーフェクトシールとは、両方向の等高ねじが付いているタイプ(図3)を指し、①のプレーンシール(ねじ無し)で解説した面圧分布によって生じるポンプ作用に加え、等高ねじによって生じるポンプ作用にてオイルを密封します。
【メリット】
・プレーンシールよりもポンプ量の絶対値が大きい。
・ねじが両方向であるため、オイルシールの仕様として回転方向の制限が無い(※正・逆方向ともに密封できる)。
・運転中において、リップの摩耗形態の悪化などにより面圧分布に乱れが生じた場合であっても、ねじが機能していればポンプ作用は保持され、密封性能を維持できる。
【デメリット】
・ねじを両方向に配置するため、正・逆方向それぞれのねじ本数はヘリックスシールやスーパーヘリックスシールのねじ本数と比較して少なくなるため、ポンプ量の絶対値はこれらよりも低下する。
・リップ摩耗(=ねじ摩耗)が進行していくと、ねじによるポンプ量は徐々に低下する(※ただし、常時プレーンシール以上のポンプ量は維持できる)。

図3 パーフェクトシール(両方向の等高ねじ)

④ スーパーヘリックスシール(一方向の2段ねじ)

スーパーヘリックスシールとは、一方向の2段ねじが付いているタイプ(図4)を指し、①のプレーンシール(ねじ無し)で解説した面圧分布によって生じるポンプ作用に加え、2段ねじによって生じるポンプ作用にてオイルを密封します。
【メリット】
・プレーンシールよりもポンプ量の絶対値が大きい。
・③のパーフェクトシール(両方向の等高ねじ)と比較してねじ本数を多く設定できるため、一方向だけで言えばパーフェクトシールよりもポンプ量の絶対値が大きい。
・運転中において、リップの摩耗形態の悪化などにより面圧分布に乱れが生じた場合であっても、ねじが機能していればポンプ作用は保持され、密封性能を維持できる。
・2段ねじ(=ねじの途中から高さが変化する)であるため、リップ摩耗(=ねじ摩耗)が進行してもポンプ量を高水準で維持できる。
【デメリット】
・ねじが一方向であるため、オイルシールの仕様として回転方向が一方向に制限される(※逆方向に回転すると漏れが生じる)。

図4 スーパーヘリックスシール(一方向の2段ねじ)

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【記事】オイルシールの密封メカニズム(ポンプ作用) – MOKUオイルシール
【記事】【メーカー研究者執筆】オイルシールのポンプ量増加方法 – MOKUオイルシール
【記事】【メーカー研究者執筆】オイルシールのリップ摩耗形態について – MOKUオイルシール
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【ご参考1】熱電対付きオイルシールについて

当方では、オイルシールの主リップ先端温度を直接的に測定することができる”熱電対付きオイルシール”の製作を請け負っています。お客様で保有するオイルシールを当方へ送付いただき、熱電対を主リップ先端のゴム中に加工し、納品とさせていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。熱電対の+/-を表記した状態で納品いたしますので、お客様では熱電対をロガーに接続いただくだけで主リップ先端温度の測定が可能となります。

【ご参考2】オイルシールの現品調査について

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