【メーカー研究者執筆】オイルシールのポンプ量測定方法

ポンプ量とは

オイルシールの密封メカニズムについて、別記事にて詳しく解説していますが、主リップ先端と軸(シャフト)との間に形成する油膜においてポンプ作用と呼ばれる一方向(大気側→密封側)のオイルの流れが生じることによって密封性能を維持しています(図1)。このポンプ作用を定量化した値をポンプ量と呼び、単位は『g/h』や『mg/h』などで定量的に表すことができます。基本的に「ポンプ量が多い=高い密封性能を有する」と考えるため、ポンプ量測定はオイルシールの密封性能を定量的に把握する上で有効となる手段の一つです。本記事では、ポンプ量測定のメリットと、ポンプ量の測定方法について解説します。

図1 ポンプ作用

ポンプ量測定のメリット

上記で解説した通り、ポンプ量測定はオイルシールの密封性能を定量的に把握する上で有効となる手段の一つです。
ここでは、ポンプ量測定のメリットについて事例で2つ紹介します。
1. 顧客が採用検討しているオイルシール候補が複数種類あるため、ポンプ量を横比較することで密封性能の優劣を定量的に提示する場合
2. 市場漏れが発生したオイルシールにおいて、調査による漏れ原因の特定が困難であるため、ポンプ量測定によって密封性能の有無を判断する場合

特に上記2. については、市場での漏れあり品/なし品を複数回収してそれぞれのポンプ量測定を行うことで、アプリ単位で市場にて密封性能を保持するためのポンプ量の目安を把握することができます。これによって、同アプリのユニット/オイルシールを新規開発/設計変更など行う際、あらかじめ『目標ポンプ量』を設定することができ、ユニット/オイルシールを設計する上で一つの指標となります。

ポンプ量の測定方法

ポンプ量の測定方法を図2に示します。測定方法として、ポンプ量は一方向(大気側→密封側)のオイルの流れであることを利用して、通常とは逆向きにオイルシールを装着(大気側にオイルを充満)した状態で軸(シャフト)を回転することで、大気側にあるオイルはポンプ作用によって密封側へと流出します。この流出したオイル量を測定し、単位時間当たりの流出量に換算(『g/h』や『mg/h』)することでポンプ量を算出することができます。
ポンプ量は、緊迫力/回転数/油種/温度などの複数の因子によって変動するため、できる限り市場での使用条件に近づけて正確な値を把握しておくことが望ましいです。

図2 ポンプ量測定方法

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【記事】【メーカー研究者執筆】オイルシールのポンプ量増加方法 – MOKUオイルシール
【記事】オイルシールのグリース密封メカニズム(ポンプ作用有無) – MOKUオイルシール
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本記事内容をご覧いただき、興味を持たれたり、『もっと詳細を知りたい』等と感じましたら、お気軽にお問い合わせよりご連絡をお願いいたします。

【ご参考1】熱電対付きオイルシールについて

当方では、オイルシールの主リップ先端温度を直接的に測定することができる”熱電対付きオイルシール”の製作を請け負っています。お客様で保有するオイルシールを当方へ送付いただき、熱電対を主リップ先端のゴム中に加工し、納品とさせていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。熱電対の+/-を表記した状態で納品いたしますので、お客様では熱電対をロガーに接続いただくだけで主リップ先端温度の測定が可能となります。

【ご参考2】オイルシールの現品調査について

当方では、オイルシールの現品調査を請け負っています。お客様より調査対象となるオイルシール(希望される場合は軸も)を送付いただき、詳細調査を実施し、密封性を有する状態かを考察(漏れが発生している場合は漏れ原因を推察)して調査レポートを提出させていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。現品調査を実施し、オイルシールメーカーの研究部/品質保証部と同様の視点で見解・考察を提示させていただきます。