オイルシールの密封メカニズム(ポンプ作用)

オイルシールとOリング・ガスケットの違い

オイルシールの密封メカニズムはOリング・ガスケットと比較して複雑です。Oリング・ガスケットは、機械・装置の静止する隙間をゴム(樹脂だったりもする)で塞くことにより密封しますが、オイルシールは回転運動する機械・装置の隙間に装着され、ハウジングに固定された状態で、主リップと呼ばれる三角形状ゴムの先端(=主リップ先端という)を、回転運動するシャフトに押し当てながら(=しゅう動しながら)オイルなどを密封します(図1)。何故、シャフトが回転運動しているのに流体であるオイルを密封することができるのでしょうか。不思議ですよね。

図1

オイルシールの密封メカニズム(ポンプ作用)

その答えは、主リップ先端とシャフトとの間に形成する油膜において、ポンプ作用と呼ばれる一方向のオイルの流れが生じるからです。要は、大気側に漏れ出ようとするオイルを押し戻す力が働いているのです(図2)。油膜によって主リップ先端の潤滑を保持しながら、ポンプ作用による密封性を確保しています。ポンプ作用を定量化した値をポンプ量と呼び、ポンプ量の多い/少ないは主リップのわずかな設計差によって大きく変動します。
基本的にポンプ量が多い=高い密封性能を有する」と考えるため、オイルシールの設計者が主リップ形状を決定する際に注力するポイントの一つです。

図2

以下の関連記事についてもご参照下さい。
【記事】【メーカー研究者執筆】オイルシールのポンプ量増加方法 – MOKUオイルシール
【記事】【メーカー研究者執筆】オイルシール漏れ要因まとめ – MOKUオイルシール
【記事】【メーカー研究者執筆】オイルシールの緊迫力とは – MOKUオイルシール

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【ご参考1】熱電対付きオイルシールについて

当方では、オイルシールの主リップ先端温度を直接的に測定することができる”熱電対付きオイルシール”の製作を請け負っています。お客様で保有するオイルシールを当方へ送付いただき、熱電対を主リップ先端のゴム中に加工し、納品とさせていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。熱電対の+/-を表記した状態で納品いたしますので、お客様では熱電対をロガーに接続いただくだけで主リップ先端温度の測定が可能となります。

【ご参考2】オイルシールの現品調査について

当方では、オイルシールの現品調査を請け負っています。お客様より調査対象となるオイルシール(希望される場合は軸も)を送付いただき、詳細調査を実施し、密封性を有する状態かを考察(漏れが発生している場合は漏れ原因を推察)して調査レポートを提出させていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。現品調査を実施し、オイルシールメーカーの研究部/品質保証部と同様の視点で見解・考察を提示させていただきます。