オイルシールの専門用語一覧まとめ

オイルシールの専門用語について

オイルシール技術を解説する上で様々な専門用語が出てきます。本ホームページの技術情報においても、初めての方には聞き慣れない専門用語が多く出てきますので、一覧表にまとめました。オイルシールメーカーのカタログや論文などでも使用されている専門用語です。ご参考になれば幸いです。

オイルシールの専門用語一覧まとめ

主なオイルシールの専門用語一覧を表1に記載します。

表1 オイルシールの専門用語一覧

専門用語意味図解
オイルシールの
各部名称に関する用語
主リップ主にオイルやグリースなどユニット内の密封媒体を外部に漏らさないためのメインとなるリップ
補助リップ主に外部からの異物(ダスト、埃など)をユニット内部に浸入させないためのリップ
サイドリップ主に外部からの異物(ダスト、埃など)をユニット内部に浸入させないためのリップ
※補助リップの補完目的
保護リップ主にユニット内部の密封媒体に混入している異物(スラッジ、金属粉など)を主リップに到達させないためのリップ
※主リップの補完目的
ねじ(リブ)主リップのポンプ作用を増加し、密封性能を向上させるために主リップバレル面に設けられる凸状の突起
カット面主リップをメスでカット仕上げしている面
※気体透過性が高い
カット角度オイルシールの外周基準としたカット面の角度
※密封側からの異物噛み込み性に影響
バレル面主リップ先端から大気側に伸びている面(カット面の逆側)
バレル角度オイルシールの外周基準としたバレル面の角度
※大気側からの異物噛み込み性に影響
スキン層加硫時に金型と直接接触して成型されるゴム面
※気体透過性が低い
リップ長リップの長さを示し、長いほど偏心追随性は向上し、緊迫力は低下する
リップの腰シャフト(軸)をリップに挿入する際、リップが変形する支点となる部分
リップの腰厚腰のゴム厚のことであり、厚いと偏心追随性は低下し、緊迫力は増加する
ばねグローブばね径に合わせて設けられている円形状のばね装着部
オフセット値(R値)主リップ先端とばねグローブ中心とのアキシャル方向のズレ量
※面圧分布に影響
オイルシールの
主要諸元に関する用語
しめしろシャフト外径(軸径)-リップ内径[単位:mm]
※シャフト外径に対するリップ先端のラジアル方向(径方向)の引っ張り量
緊迫力シャフト外径に対するリップ先端の締め付け力[単位:N]
単位長緊迫力緊迫力[N]をシャフトの外周長さ[mm]で除した値[単位:N/mm]
※オイルシールサイズ影響を受けずに緊迫力設定を考察する際に用いる
摩耗幅(しゅう動幅)シャフトとリップ先端がしゅう動する(=擦れる)ことによって摩耗したリップ先端のアキシャル方向(=軸方向)の長さ
オイルシールの
運転条件に関する用語
内圧オイルシールに対する密封側からの圧力
※正圧であれば緊迫力は増加、負圧であれば緊迫力は低下
外圧オイルシールに対する大気側(=反密封側)からの圧力
※正圧であれば緊迫力は低下、負圧であれば緊迫力は増加
軸偏心シャフト(軸)を回転させた時の、シャフト外周面のラジアル方向の全振れ量[単位:mmTIR]
取付偏心(組付け偏心)測定器をシャフト(軸)基準で回転させた時の、ハウジング内周面(=オイルシール圧入穴)のラジアル方向の全振れ量[単位:mmTIR]
総偏心(Total偏心)軸偏心+取付偏心[単位:mmTIR]
周速シャフト外周部が1s当りに移動する距離[単位:m/s]
※周速[m/s]=回転数[rpm]×軸径[Φmm]×π÷60,000
オイルシールの
性能に関する用語
ポンプ作用主リップ先端において、大気側に漏れ出ようとするオイルを密封側(=ユニット内部)に押し戻す力
ポンプ量ポンプ作用を定量化した値
※基本的に「ポンプ量が多い=高い密封性能」と考える
面圧分布シャフト外周部に接触している主リップ先端の応力分布
※適正な分布を維持することでポンプ作用が発生
外周部かん合力ハウジングに対するオイルシール外周部の固定力
摩擦係数リップ先端とシャフトとの間で生じる摩擦の大きさを表す指標
※ゴム材自体の滑り性や潤滑状態により変動する
回転トルクシャフト(軸)が回転する際、シャフト表面とリップ先端の接触面で発生する摩擦によって生じる抵抗

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【記事】【メーカー研究者執筆】オイルシール漏れ要因まとめ – MOKUオイルシール
【記事】オイルシールの密封メカニズム – MOKUオイルシール

本記事内容をご覧いただき、興味を持たれたり、『もっと詳細を知りたい』等と感じましたら、お気軽にお問い合わせよりご連絡をお願いいたします。

【ご参考1】熱電対付きオイルシールについて

当方では、オイルシールの主リップ先端温度を直接的に測定することができる”熱電対付きオイルシール”の製作を請け負っています。お客様で保有するオイルシールを当方へ送付いただき、熱電対を主リップ先端のゴム中に加工し、納品とさせていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。熱電対の+/-を表記した状態で納品いたしますので、お客様では熱電対をロガーに接続いただくだけで主リップ先端温度の測定が可能となります。

【ご参考2】オイルシールの現品調査について

当方では、オイルシールの現品調査を請け負っています。お客様より調査対象となるオイルシール(希望される場合は軸も)を送付いただき、詳細調査を実施し、密封性を有する状態かを考察(漏れが発生している場合は漏れ原因を推察)して調査レポートを提出させていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。現品調査を実施し、オイルシールメーカーの研究部/品質保証部と同様の視点で見解・考察を提示させていただきます。