【メーカー研究者執筆】オイルシールのリップ摩耗形態について

オイルシールのリップ摩耗形態の種類

オイルシールを使用している過程で、主リップ先端の摩耗形態に特異な差が生じることがあります。摩耗形態には以下の種類があります。
 ① フラット摩耗
 ② R摩耗
 ③ 2段摩耗

上記3種類の摩耗形態を図1に示します。それぞれに特徴があり、摩耗形態の種類によってはポンプ量の低下に繋がることで漏れが発生してしまうリスクが高くなります。
本記事では、これら摩耗形態の特徴について解説します。

図1 摩耗形態(左:フラット摩耗、中央:R摩耗、右:2段摩耗)

リップ摩耗形態の特徴

上記3種類の摩耗形態に関して、詳細を以下に解説します。

1. フラット摩耗

フラット摩耗とは、主リップ先端の摩耗形態がシャフト(軸)に対して平行となる状態であり、最も理想的な摩耗形態です。
同摩耗状態を維持することによって、ポンプ作用を形成するための面圧分布のピークは密封側(=オイル側)を維持する(図2)とともに、ねじ付きオイルシールの場合はねじの機能を喪失することなく、ねじによるポンプ量アップの効果を保持することが期待されます。

図2 フラット摩耗の面圧分布

2. R摩耗

R摩耗とは、主リップ先端の大気側または密封側(=オイル側)の摩耗形態がR形状となる状態であり、ポンプ作用が低下する可能性があります。
大気側の摩耗形態がR形状となることで、ねじ付きオイルシールの場合はねじの摩耗が促進され、ねじとシャフト(軸)とが接触しなくなる/しにくくなることで、ねじによるポンプ量アップの効果を喪失/低下してしまう可能性があります。
また、密封側(=オイル側)の摩耗形態がR形状となることで、ポンプ作用を形成するための面圧分布のピークは密封側(=オイル側)→大気側へとシフトするため、ポンプ量は低下する可能性が高くなります(図3)
R摩耗は、圧力変動やグリース動圧の影響によって発生すると考えられます。

図3 R摩耗の面圧分布

3. 2段摩耗

2段摩耗とは、主リップ先端の摩耗形態が2段形状となる状態であり、ポンプ作用が低下する可能性があります。
同摩耗状態となることによって、ポンプ作用を形成するための面圧分布のピークは密封側(=オイル側)を保持する(図4)こととなりますが、ねじ付きオイルシールの場合はねじの摩耗が促進され、ねじとシャフト(軸)とが接触しなくなる/しにくくなることで、ねじによるポンプ量アップの効果を喪失/低下してしまう可能性があります。
2段摩耗は、圧力変動スティックスリップの影響によって発生すると考えられます。

図4 2段摩耗の面圧分布

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【ご参考1】熱電対付きオイルシールについて

当方では、オイルシールの主リップ先端温度を直接的に測定することができる”熱電対付きオイルシール”の製作を請け負っています。お客様で保有するオイルシールを当方へ送付いただき、熱電対を主リップ先端のゴム中に加工し、納品とさせていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。熱電対の+/-を表記した状態で納品いたしますので、お客様では熱電対をロガーに接続いただくだけで主リップ先端温度の測定が可能となります。

【ご参考2】オイルシールの現品調査について

当方では、オイルシールの現品調査を請け負っています。お客様より調査対象となるオイルシール(希望される場合は軸も)を送付いただき、詳細調査を実施し、密封性を有する状態かを考察(漏れが発生している場合は漏れ原因を推察)して調査レポートを提出させていただきます。オイルシールのメーカーは問いません(どのメーカーでも対応いたします)。現品調査を実施し、オイルシールメーカーの研究部/品質保証部と同様の視点で見解・考察を提示させていただきます。